富士山と富士五湖の情報局

鵜の島の弁天様
【鵜の島の弁天様】
富士五湖に浮かぶただ一つの島、鵜の島には、女神豊玉姫が弁天様としてまつられています。
姫は嫉妬深く美女に災難を及ぼすといいます。

鵜の島の弁天様

豊玉姫は出産のおり、けっして産室に近づくなと告げました。尊が禁を破って覗き見ると、そこには一匹の大ナマズがのたうちまわっていました。

 ある日、河ロ湖で釣りを楽しんていた彦火々出見尊(ひこほほでみのみこと)は、通りすがった美しい娘に声をかけました。娘は島に住む豊玉姫で、尊にこぼれるような笑顔でこたえ、二人はたちまちのうちに恋をしました。
 尊は豊玉姫の住む島にわたり、そこで新婚生活をはじめました。やがて姫は、めでたく子を身ごもり、出産の支度がはじまりました。姫は島を離れたところに産屋(うぶや)を作ってほしいといい、また、産屋にはけっして近寄らないでくれと頼みました。尊は島の鵜に相談し、その羽毛をもらって産屋の屋根をふきました。
 いざ、出産のときを迎えました。尊は心配でなりません。けっして産屋に近づくなという言葉も気がかりとなってきました。そして、とうとう姫との約束を破って、産屋を覗いてしまいました。
 そこには、恋しい妻の姿はなく、一匹の大ナマズが、まさに子を産もうとしているところでした。
驚いた尊の気配に、姫は振り返り、悲しみ、そして怒りました。「わたしの正体を知ったからには、これ以後、あなたの国人を湖中に引き込んで、さいなんでやりましょう」そう言うと、鵜の島にわたり、それから人前に姿を見せなくなってしまいました。
 弁天様は、嫉妬深く、美人に災いをもたらすといわれます。こんな話も残っています。江戸時代のことです。島に花摘みにきた十二人の娘が、弁天様のお顔を悪く言いました。すると黒い雲が現われ、波は荒れ、帰りの船を転覆させてしまいました。娘たちはみんな湖底に沈んだといいます。


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