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禁断症状

 熱帯魚・水草の飼育を始めた最初の頃、あるいは現在においても突然襲ってくる禁断症状があります。
それは、「アクアショップに行きたい」…「行きたいよーーー」って言う欲求を押さえきれないことです。
自分の水槽を眺めては「行きたいよーー」。
いろいろ想像しては「行きたいよーー」。
暇になった時「行きたいよーー」。
もう、とにかく何が何でも「行きたいよーー」なのです。この気持ちを押さえるにはもう実際に行くしかないのです(そりゃそうだろ)。
てな訳で今回はショップ巡りのお話でも。

私の住んでいる地域には不幸にもアクアショップが余りありません。
熱帯魚だけを扱っているショップならある事にはあるのですが、水草までも含めてしまうとホームセンターのみになってしまいます。
私の住処は河口湖にあります。ホームセンターは10Km先。
ここには何度も足を運んでいるので、どこに何があり、水草等の入荷状況も把握してしまいました。
で、「今日も昨日と同じだろう」なんて思いながらも足を運んでしまい、「ああ、やっぱり同じか」なんて言いながら、餌をついつい買ったりして帰ってくるのです。
しかし、アクア歴も年を重ねるとともに「どこにショップがあるか」なんていう情報も加わり、新たなショップの開拓に走り、ローテーションのようにショップ巡りに精を出すのです。

そして水槽維持の初期の頃は甲府方面(40Km〜50Km)を自分の限界線と決め、ショップ巡りを定期的に行っていたのでした。
禁断症状の中毒患者のように…。

新規開拓

 しかし、しかし、遂には巡っているショップも把握してしまうと新しい発見が期待できなくなってきます。
「何か変わった魚や水草は無いの?」なんて欲求が頭をもたげ、わざわざ出かけたショップに行っても手ぶらで帰る日が続いてしまいます。
甲府っていえば半日を潰すほどの小旅行なのですが、ショップを巡り、この前と同じって思いながら手ぶらで帰る…。
それでも行ってしまう魔力…うーーん。

だったら、「ここは一つ県を越えるか…、静岡だ!」
しかし、河口湖から見て静岡の都市っていうのは海沿いにあるため70Km程度離れているのですが、富士山の反対側ってことになり、中旅行程度になってしまうのです。
幸い平日も自由になる身柄のため、とある水曜日に意を決し中旅行に出かけることにしました。
これで、私のショップ巡りの行動半径は河口湖を中心に70Km程度の円となってしまうのでした。

静岡っていうのは良く行きはするのですが、「どこにショップがあるか」ってことになると皆目見当もつきません。
「いったい…どうしたら良いのでしょう?」
雑誌の広告を見ても静岡県内の近い場所の地域の広告は無いし…(静岡県って結構大きいんですよ。浜松っていったら名古屋のほうでしょ?)
だからといって東京に行っても良いのですが、「駐車場」が気になってふんぎりがつかないし…。
そこで、「そうだ電話帳だ!」と閃き、自宅にあったタウンページを引っ張り出して静岡のアクアショップを検索してみました。
(タウンページには他県でも近い場所の広告程度なら出ている場合がある)
すると、「ありました」。地図が付いたアクアショップが…。
「よし、これでGO!GO!」です。
家族の理解を得るために「海を見に行こう」と騙して連れ出し、誰にもわからないようにタウンページの広告部分だけを破き、富士宮市に向かうのでした。

河口湖・西湖・精進湖・本栖湖を抜け、有名になった上九一色を過ぎ、朝霧高原をドライブしながら富士宮市へ。
行く前に地図を頭に叩き込み「アクアショップ行く」と気づかれないように目的地に疾走するのでした。
多少は土地感もあるので迷わずに目的地に着きました。そして、「あ、こんなところにアクアショップがある…ちょっと寄っていこう」なんて独り言を聞こえるように漏らし、アクアショップの駐車場へ…。
鉄筋2階建ての、何だか期待させるアクアショップでした。
さて、入り口から入ろうとすると、「ガビーン!」。
そこには「水曜定休日」の看板が…。その瞬間ヘナヘナと腰のあたりがよろめくのを感じたのでした。
「残念だね」と言う奥方の声を無常に聞きながら、「しょうがないさ」と気勢をあげたのでしたが、目的がアクアショップだった私の心の落ち込みようは壮大なものでした。
そして、「このままでは帰れない」。そう決心するには時間がかかりませんでした(後日再びまたココに来ることになったのは言うまでも無い)。


…「よし、沼津の海に行こう!」と提案し東名高速に乗ったのでした。地図を説明すると、沼津に行くには河口湖を富士宮に行く方向と逆に行くのが本来のルートなのですが、目的地が富士宮だったのでしょうがありません。
さらに私にはもう1つ計画がありました。それは、高速道路のパーキングには公衆電話があって、そこには静岡版のタウンページがあるはずなのです。
そこでショップの地図を手に入れれば、まだ計画を追行できるはずです。
高速に乗り、沼津方面に車を走らし、「途中パーキングが無いんじゃないか」という不安と戦いながら、なんとかパーキングを発見して休憩することにしたのでした。
そして、公衆電話に駆け込みタウンページを取り出し、「破こうか」という誘惑と戦いながら、持参した手帳に地図の出ている近郊のショップのみを書き移し、そそくさとパーキングを後にするのでした。
もちろん、しっかり定休日も確認して…(水曜日って定休日の店が多いというのも知りました)。

本日は沼津の土地感があって、定休日で無いアクアショップの1つに狙いをつけて訪問することにしました。
沼津で高速を降りて、記憶している道をたどり、何とか迷わずに目的のアクアショップにつきました(1度は通り過ぎましたけど)。
さてここで、さも当然このアクアショップは知っているようなふりをしながら車を走らし、店内に入る演技が重要なのです。
あくまで海に行く途中、偶然ショップに入るという演技が…。

このショップは現代的な造りのレイアウトがしてあるショップでしたが、水草の数は少なく、欲求不満を満たすショップではなかったのでしたが、意地になっている私は「絶対何か買うぞ」っていうモードに突入していました。
そして、退屈そうな家族を横目に1時間以上かけて物色し、クリプトを数種類Getしてショップを後にするのでした。
心では「今日はこれで許してやる」と思いながらショップを出て、公約である海を見に車を走らせるのでした。
もちろん、懐には定休日も控えた静岡県のアクアショップ数件の書き移しを暖めながら…。
 後日、沼津にある他のショップ(アマゾン沼津店)から相互リンクの依頼があったのは因縁でしょうか?

海を見た帰りは途中の御殿場で酒を引っ掛けてカワハギの刺身を摘むのでした。
「目的としてアクアショップに来ているのに刺身を食べているのか…」と妙に複雑な心境だったことを記憶しています。
そして、山中湖を抜け河口湖に戻ってきたのでした。
振り返ると富士山一周の旅でした。海を見ていたのは夕方の1時間程度。
おそらく、私がアクアショップを目的として家族を連れ出したことはバレているでしょう。
そして、ここからアクアショップ巡り富士山一周の旅(含む甲府)が恒例化したのは言うまでも無い(これは1日コース)。

傍から見れば理解できない行動でしょう。でも行きたいものは行きたいのです。
それだけでなく、雑貨屋に入ると日用品コーナーにも目を配り、「何か水槽に役に立つものは無いか?」なんて思い始めるのです。
これも傍から見ると日用雑貨を物色している変な人になってしまっている危険性もあります。
しかし、ショップ巡りって別の意味でもアクアライフの一部であり、楽しいものです。
「増やそう広げようアクア中毒の輪!」

ショップ小ネタ(番外編)

大月方面にアクアショップがあるという情報を聞き、早速捜索の旅に…。
住所を頼りに探してみるが数回の捜索にもかかわらず発見できない。後に場所を移したという新情報を入手して、再び捜索に出かけた。
これまでに捜索に出かけた数は数え切れない…「これでたいしたこと無かったらどうしよう?」という疑念がよぎり始める。
しかし、新しい住所の場所にもショップは見当たらない。
最新の電話帳にも「熱帯魚」って記載されているのに。
そして、とうとう6ヶ月に及ぶ捜索の末小さなショップを発見。
駐車場から見ると店内では犬の散発をしている…。
「何かいやな予感がするぞ」と思い店内に入ると、魚がいない。
「あのう熱帯魚は?」と聞くと「ああ、あれもうずいぶん前に止めました」と店主らしき人物が言う。
「だったらタウンページに熱帯魚って書いておくな!」
半年に及ぶ捜索と期待が小さなペット美容店だったとは…。
ふと駐車場の看板を見ると、エンジェルフィッシュの絵とともに「熱帯魚」って書いてある。
駐車場を出るときに自分の車の止まっていた場所に哀愁が漂っていると感じたのは気のせいだったのだろうか?

ホームセンターのアクア用品の場所でいつものように物色中。
すると一人の老婆が近づいてきて、「おにいちゃんエンジェルフィッシュが子供食べちゃうんですけど」と尋ねてきた。
話を聞くと産卵をして孵化をするらしいのだが稚魚が食べられるとのこと。
そこで隔離水槽を勧め、ついでに稚魚の餌を選別してやる頃になると、すっかり意気統合。
数時間にも及ぶ雑談の中で色々身の上話を聞く羽目になった。
40才を大分過ぎた独身の息子が熱帯魚飼育をしていたそうだが、最近は手を抜き、今では自分が世話しているらしいとのこと。
しかも、息子は(といっても私にはおじさん)外にも出ず、家に閉じこもり困っているとも…。
私は自分でインターネットに熱帯魚のページを持っていて丁度はまっているとかを話したと思う。
すると、その老婆は「あなたのような人が息子だったら」と涙ぐみ、「ぜひ家に来て水槽を見てくれ」とか「私の息子になって」とか言い始めた。
私は丁重に辞退し、「この場所には良く来るから」と言い残してホームセンターを後にするのでした。
 「良く来る」といっても1週間ぐらいは来ないのですが、次にホームセンターを尋ねたら店員が私のほうにやってくる。
私はあまり(ほとんど)店員と話したことは無いのですが、店員は私を知っているようで、「おばあちゃんが毎日尋ねてきて1日中いた」とのこと。
しかも、あれから何日か連続で尋ねてきていたようである。
どうやら昨日から来ていないようであるが、私は心が痛んだ。
それから私も2日ほどホームセンターを尋ねたが再会できていません。
エンジェルフィッシュはうまく飼育できているのでしょうか?
インターネットなんて知らないと思うが、いつか突然メールが届くかもしれない…。
私は今でもホームセンターを時々尋ねているからね、おばあちゃん。


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