葉と根を考える

陸上植物を見る
高山植物を代表する植物に「駒草（コマクサ）」があります（写真参照）。
種類データならここにアクセス。
この植物は高山の瓦礫地帯に自生する植物で、山の斜面に群生しています。
このような植物は瓦礫が動くことを前提に根が作られています。
つまり、根が切れることが重要になっています。
高山では常に瓦礫が動くため、このような仕組みになっているのでしょう。

しかし、瓦礫が自身の根によって細かく分解され、条件が変わると根が詰まり、高山植物はもうそこで生育できません。
生育環境が変わってしまうのですね。登山道等の遊歩道によって瓦礫の動きが止められたり、ちょっとした環境の変化で自生地が変わるのです。
ところが、高山植物の多くは標高が低くても高山植物は繁殖します。
これは人間の手による介在が必要です。
低地でも高山の環境を想定して育成すれば、高山に置かれた時より良く繁殖します。
植物にとっても低地のほうが過ごしやすいのです。
ただ環境に適応した結果、低地には適した環境が無いので自生できないだけなのです。
自然の不思議と言うか無駄と言うか…。

火山の噴火があった瓦礫地帯に最初に入り込んでくるのは高山性の植物です。
やがて植物の根は瓦礫を分解して自らの生育地を離れます。
そこに代わって入ってくるのは草原性の植物です。ススキやササなんかがそうですね。
次に低木、針葉樹、広葉樹とその植生が変化していきます。
富士山の５合目から麓に向かうと一度にその植生が見られます。これは日本列島の７０％近くを網羅する植生でもあります。
ちなみに現在、植物は富士山を３０００mまで駆け上がっています。気の遠くなるような歳月をかけて…。

森林の木の根を掘り返すと白い菌糸状の綿が根の周りに広がっている光景を良く目にします。
ちなみに赤松の根のテリトリーである白い菌糸があるところに松茸が出てきます。
ベテランの松茸取り名人になると、菌糸を残して松茸を採取するので来年も同じ場所に生えてきます。
それが、偶然発見した人が松茸を取ると菌糸を掘り返してしまいテリトリーを殺してしまい、二度と同じ場所に生えてきません。
松茸の生える場所は「例え親族でも」秘密です。連れ立って行く場合にも道を蛇行して現地に向かいます。
そして、伝承の時期がきた時に秘密が明かされます。それほど山を大切に保存して行く知恵が地方の人にはあります。

さて、白い菌糸状の役割ですが、これは根に共生した菌で、根に深く食い込んで養分を根に吸収させやすくします。
代わりに根からは養分をもらうのです。
１本の木の根の周囲には、根の範囲以上の菌糸がテリトリーを形成しています。

水生植物を見る
一方、水生植物は当然の事ながら水中に存在します。または水中に適したように変化します。
陸上の植物と同じように考えてもいけないのだと思います。
日本における水中植物に付いては経験も少なく、また陸上の園芸を経験したことの無い人が多く入ってきています。
そのため植物全般に常識的なことも知識不足から「むずかしい」と思われています。
アクアショップ等も園芸の経験から移行したよりも、熱帯魚を扱っている途中で水草に移行したほうが多いでしょう。
ここにも問題がある様に感じられます。
肥料のページでも書いてあるように、園芸肥料で十分、水草の育成が出来ます。
アクアショップで水草専用の肥料について成分を質問してみてください。おそらく答えられないと思います。
中に何が入っているのかわからない肥料を与えて水草の状態を想定するなんて根拠の無い推論に過ぎません。

余談として、人気のある「テトラクリプト」と「イニシャルスティック」を想像しましょう。
「クリプト」は「イニシャルスティック」にも付いて来て、速効性から水槽立ち上げ時に入れるようになっています。
やがて底にひいたスティックが分解され肥料として役に立つ頃に必要無くなる…。
これは単に「クリプト」は溶けやすいだけで成分は同じだと想像できれば良いと思います。
その成分はカリだと。
ちなみに日本製の製品には成分表示がありませんが、現地の製品には
成分比率は「1-0-25」です（窒素-リン-カリ）。で、原文ですと、

Tetra Hilena Crypto
Guaranteed Analysis: Total Nitrogen (N)1%, Soluble Potash(K2O)25%
Derived from: Total Nitrogen (N): Ethylenediaminetetracetic acid and
Ethylenediaminetetraacetic acid dihydrate, iron_sodium salt.
Soluble Potash (K2O): Potassium Sulfate
つまり、両方とも同じ成分で、溶けやすさが違うだけですね。
そこで私は、底肥料には「リンとカリ」を主成分にした固形の園芸肥料で、即効性を得るためには「粉末硫酸カリ」と「ハイポネクス開花用」で十分だと書きました。詳しくは肥料のページ。

根の張る水草は陸上の園芸が通用すると思います。
しかし、水中に適した水草は未知数です。
そこで水草の、肥料（養分）の取り方を考える事によって本ページを考察したいと思います。（他の要素等を考えない）

養分は葉からも取る
さて、水草の中には陸上から水中に移動すると「水中葉」に変化させる種類があります。
これらの多くの種類は「根から養分を主に取る」と思っても良さそうです。
また、有茎系以外の水草も養分を取る比率の半分以上を根からと考えます。
逆にそれ以外の水草は葉から主に養分を取ると考えます。根は砂に留まるために必要（昆布を想像）。

葉から<---->根から

モス	カボンバ	スプライト	チドメクサ	レインキー	バリスネリア	クリプト	エキノ

とまぁ、こんな感じでしょうか？なんとなく分類できるでしょうか？
つまり、葉から養分を取る水草は液肥が有効で、根から養分を取る水草は低肥が必要だと言うことです。
分類イメージが出来れば育成のコツもわかるかもしれません。
試しに肥料添加の載っている水草の資料を見てください。「液肥のみ、固形肥料、両方」の分類でも確認できると思います。

さて総合すると
水槽立ち上げ時に底肥をまぶしてセットしたとすると…。
底肥はバクテリアで分解されておらず、水中にも底肥の肥料が溶け出しているので、テストプラントとして有茎系の水草を植える。
水中の余計な肥料は葉から吸収されたり（コケの発生を多少とも抑えられる）、根を張ることによって底肥の分解を促す（根を張ることによって底肥にはバクテリアが住みつく）。
1ヶ月後、まだ底肥が十分に分解されない時期、水替えを繰り返す事により水中の肥料が欠乏してくるので液肥（主にカリ）を施す。
こうしないとテストプラントも縮小してくる。
１ヶ月以上（２ヶ月ぐらい）すると、底肥はバクテリアによって分解され養分吸収に適してくる。
この時期からクリプト系やエキノ系を植えるとうまくいく。
根を大きく張る水草の根の周囲にテリトリーが形成され始め、底床が豊かになる。
ここで安心すると有茎系の水草が縮小してくるので適度な液肥（主にカリ）を水替え後に施すと良い。

レイアウト水槽では多種多様な環境の水草を同一の水槽に入れるのでギリギリ限界の線を維持するのが難しいのだと思います。
実際には、これにCO2や光量が関係してくるのです。
しかし、基本は同じです。
魚の飼育では種類ごとに水槽分けを行いますが、水草の場合は余り気を使いません（もちろん、陸上の高山植物や山野草も砂や鉢それに置く場所を考慮しています）。多くの水草水槽は混合水槽なんですね。
クリプト系やエキノ系に辿りついているアクアリストは自然に解った事でしょう。
かえって有茎系の水草のほうが難しいと思っているかもしれません。「初心者の頃は育成できたのになぁ」なんて…。
また植物は、おそらく「モノを言わない」ので、無頓着になっているのかもしれません。
植物は２週間しないと効果が見えないのです。これは園芸の基本です。
このあたりも難しいのでしょう。

ここでの想像は「種類による養分の吸収のされ方と底床の形成、植生の変化が水槽にもある」と言う事でしょうか？
これを日々の観察でイメージできれば水草育成も「もしや」の連続で楽しいのではないでしょうか？
やはり、綺麗にレイアウトしてイメージに合う水草を多種育成したいもんね。
《参照：水草水槽の強い水》

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