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いつもの水替え

 今からお話する事件は、前回の「低温失敗」の前におきていました。そうですね、「低温失敗」の1年ほど前になるのでしょうか?
水替え用のホースを取り付けて数ヶ月後のことです。

いつものように150cmと60cm水槽を掃除して、水替えを何のトラブルもなく行い終了させました。
この頃の150cm水槽は当ページの先頭写真にある状態でした。
つまり、水草も魚も調子が良く、なおかつレイアウトも自分なりに気に入っていました。
事件があったときの150cm水槽内の覚えているデータとしては、

魚編:
ロイヤルブルー・ディスカス 3匹
ピジョンブラッド・ディスカス 2匹
カージナルテトラ 40匹
ブラックネオンテトラ 10匹
グローライトテトラ 10匹
ペンギンテトラ 5匹
ダイヤモンドテトラ 10匹
ブラックファントム 6匹
トランススルーセントグラスキャット 5匹
スマトラ 6匹
コリドラス 4匹
セルフィンプレコ 1匹
ラミノーズ 15匹
マーブルハチェット 4匹

以降は良く覚えていません(匹数もおおよそです)。水草はリシアとアマゾンソードを主体にレイアウトしてありました。

異変の前兆

 その日は何時に水替え作業を行っていたのか覚えていませんが、異変を感じたのは深夜(1時ごろ)でした。
前にも書いたようにタイマーによって照明が自動的に切れるので異変に気が付くのに手間がかかったのかも知れません。
水槽の自動管理は思わぬ落とし穴があるのです。
「もっと早く気が付けば…」と後に後悔しています。

話を戻して、深夜1時…。ふと150cm水槽を覗くとペンギンテトラとディスカスが水面でパクパクしていることに気が付きました。
「なんだろう?何かつまんで食べているのかな?」と思い「何をつまんでいるんだろう?」と水槽に近づいて様子を見てみると、他にも10匹ほど水面でパクパクしています。
「なんだ?こ、これは…」。「水槽内が酸欠しているのか?」
更に良く見てみると、屍が累々と…。
砂の上、葉の間、水面、いたるところに死骸が…。
「うそだろーー!」
何度見てもその状況は変わることはありません。つまり、現実なのです。
どう多めに見ても生きている魚は十数匹しかありません。
水替えのときには何の異常もなかった水槽が今では地獄絵のようになっています。
「なんでだ?? どうしてなんだ?? 何がおきたんだ??」と繰り返し自分で反芻しながら、しばらくボーゼンと水槽を眺めていました。
「どうして酸欠になるようなことがおきたんだろう?」。
「CO2の異常添加か?」と思い装置を調べましたがわかりません。そもそも時間でCO2の供給が止まっているので確認のしようもありません。

まだ生きているディスカスが水面で横になり始めています。あわてて網で助けようとしても横になりながら水中に逃げてしまいます。
その時です、原因が分かったのは…。

話には聞いていたけど

 網で魚を助けようとしたとき、何か水面がモワッとするのです。「もしかして」と思い水温計を見ると35℃!!
「なんだー、こりゃ」。
「水温が上がっている??」
あわててサーモを確認すると温度調節のつまみが35℃を指しているではありませんか。
「どーしてなんだ??」
しかし、水温はつまみの指し示す通り35℃なのです。
つまり、これは機械の故障ではなくまぎれもなく誰かが温度調節のつまみをひねったことによって生じた人災です。
高温のため死んだのか高温による酸欠で死んだのかわかりませんが、大切に管理してきた私にとって大量死という現実はショックでした。

 以前、熱帯魚の飼育をしていて今は止めたという知人の話の中に、「どうして止めたのですか?」という私の質問に対して「煮魚にしたから」という返答がありました。
昔のサーモはバイメタル式(温度変化による金属のそりで通電が制御できる装置)で温度調整していたので温度管理が難しかったらしく、煮魚事件は良くあったそうです。
しかし、私のサーモは150cm水槽を立ちあげるときに電子式を選択し、温度調整も楽に出来るタイプを選択したのに事件は起こってしまいました。


 早速、温度を25℃に設定し、どーするのか考えることにしました。
通常なら魚を網で捕らえ他の水槽に移すか、水槽の温度を下げるのでしょうが、この時私は時間の経過で温度が下がることを選択しました。
「何故でしょう?」
明らかに現在の生あるものに対してのぼうとくです。
深夜なので水替えによる温度低下策に抵抗があったのかもしれません。
網で捕まえるとき逃げられたから…。
いや、あまりの出来事に全てのやる気を喪失させたのでしょう。

 「もーどうでもいいや」と思いながら眠りに就くとき「何故、温度調整つまみが別の温度を指したか?」を考えざるを得ませんでした。
「どーして、つまみが35℃になったんだろう?」
35℃というのはそのサーモの設定できる最高温度です。
私以外の誰かが設定するわけないし、そうすると自分でやったことになる。でも、やった記憶はない(当然)。
「うーーむ??」
サーモに近づいたのは、水替えのときだけだし。水替えのときにサーモに触った記憶はないし…。
「つまみが動く可能性…」。
原因、原因、原因、原因、原因、原因、原因…。

 しばらくして一つの可能性を見出しました。
確定したわけではありませんが、可能性としては十分考えられる原因を。
それは、「水替えのときに使用するホースが偶然、つまみに当たり回転したのでは?」です。
<-こんな具合か?
「むむむ…、十分可能性はあるぞ」
今まで使用していたサーモの温度調整の方法は、マイナスドライバで回すという、ちょっと安っぽいサーモでした。
それなのに150cm水槽にするときに、少しふんぱつして調整が簡単なサーモにしたのがあだになりました。
つまみは簡単にクルクル回るのです。おそらく、それがマズカッタのです。
水槽に水を入れるときにホースの一部がつまみに触れて…
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」
「眠れないや、こりゃ」

一夜明けて

 さて翌日、おそるおそる水槽を覗くと状況は悲惨でした。明るくなってみる水槽は凄惨を極めていました。
生き残って泳いでいた魚は、
ピジョンブラッドのディスカス1匹。
セルフィンプレコ、コリドラスの各1匹。
つまり、3匹以外はすべて全滅でした。
ふたたび「あぁぁぁぁぁぁぁ」
悲しみに浸りながら水草を抜き(葉の間に死骸が入りこんでいるため)、見つけた亡骸を網ですくい、水槽を整理しました。
全ての作業を終えるとそこにはガランとした水槽がありました。少なくなった水草の中をけなげに生き残った魚が泳いでいます。
「あぁぁぁぁ、ふぅぅぅぅぅぅ」
ため息しか出ません。

 その後、水を半分ぐらい替えて(腐敗菌があると思ったので)、適当なレイアウトで水草を植え直し一段落させました。
そうそう、サーモの対策をしなくては行けません。
再び同じミスを犯さないためにも何か手を打たなければ単なるアホです。
いっそ、つまみを接着剤で固定しようかと思いましたが、後々問題が起こりそうなので、却下です。
結局、つまみの上に輪ゴムが通るように巻いて簡単につまみが回転しないようにすることで対処することにしました。
<-これ。高いサーモを買ったのに見かけは安物になってしまった。

 幸い水草への影響はまったくありませんでした。
その後、また徐々に魚も増やしていきましたが、色々な種類をゴチャゴチャ入れていた以前と違い数種類の気に入った魚のみを追加していく方針に変化していました。
自分に過信して「行け行け」で飼育していた心境から何かが変化したのかもしれません。

事件の教訓でも

 さて、前回と今回で温度管理の失敗に付いて書いてみました。私は不幸にも両方経験したわけですが、不幸というよりはやはり、ミスなのでしょう。
良く考えてみると閉ざされた空間ではちょっとした変化でも生き物は生きていられません。
状態がうまくいっているときには気にもしませんが、事件が起こると「微妙なバランスの上に成り立っている環境だ」ということがわかります。
突き詰めると「自然の中で暮らしていたものを人間のエゴで飼育して良いのか?」というジレンマに陥ります。
また、そう言う人もいます。
しかし、多くの飼育者(動物でも植物でも)は、少なくとも愛情を持って飼育しているのです。そして、飼育の難しさや死というものに直面して自然の偉大さを再認識しています。
飼育の経験のない人が「君、生き物は自然の中で生きるのが一番」と言う正論より、経験からくる生命の尊さの方が良いと思います。
 もちろん、飼育するからには、その生命の特性等を知ってから始めることも重要です。
また希少価値のあるものは、その重要性を知ることも必要です。
失敗は誰にもあります。そして失敗を学ぶことも出来ます。私の至らない失敗を1人でも多くの人に伝えられたら…。

まだまだ、道のりは続くのです。


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